シンガポールでは2021年6月1日より「PHOs(部分水素添加油脂)含有食品」製造・販売が禁止となりました。
2年前の2019年6月、MOH(シンガポールの健康保健相)はトランス脂肪酸*を多く含有する「PHOs(部分水素添加油脂)」を使った食品の、2021年6月からのシンガポール国内での製造・販売を禁止の発表をしました**(2019年当時は市場に出回っているスナック菓子類の1割にPHOsが使用されていた)。
いよいよ期日を迎え、今後シンガポールでのPHOsが入った食品は製造も販売も禁止となります。日本からシンガポールへの食品輸出を考えている企業・個人は今後、この点は注意項目としてしっかり認識していかなければなりません。
日本では、「部分水素添加油脂(PHOs)」の使用は禁止されていません。このため、日本からシンガポールへの輸入食品に大きく影響が出るのではないかと想像されていましたが、すでに、2015年ごろからの欧米やタイでの同油脂を含む食品に関しての規制の高まりから、自主的に使用を取りやめ早くから動いていた食品メーカーもあり、このようなメーカにおいては対応が順調に行われました。
一方、在シンガポールの日本食の扱いがある、食品輸入・小売り業者は、それぞれに製造元メーカーに食品成分を問い合わせ作業を行っていますが、中にはすべての原料を開示できないメーカーもあり、確認の数量もさることながら、確認作業は一筋縄には行くものではなく、作業には根気と時間を擁しました。また製造工程上、PHOsを取り除く食品が作れないため、シンガポールへの輸出を諦めたメーカーもあります。
規制の正式な施行は今月からですが、この規制自体に対しての取り締まりの強化や、取組・取り締まり事例などは、施行開始後により詳細が出てくると予測されます***。
*2020年3月に修正版が出ました。2019年当初は「脱臭された油脂」すべてが対象となりましたが、食品メーカーへの意見調査も取り入れた結果、2020年には、「水素化された油脂」と修正が加わり、脱臭された油脂すべて対象というくくりではなくなりました。
**脂質は三大栄養素の一つですが、トランス脂肪酸については、食品からとる必要がないと考えられており、日常的にトランス脂肪酸を多くとりすぎている場合には、少ない場合と比較して心臓病のリスクが高ま
ることが示されています。(WHO見解)
***HPB(Health Promotion Board/シンガポール健康増進庁)からのシンガポール国内での製造・販売を禁止についての最新資料は2020年3月の修正版が最後です(MEWR<Ministry of Environment and Water Resources/水資源省>策定SALE OF FOOD ACT “CHAPTER 283″)。また2021年5月の時点で、日系食品取扱事業者数社に聞き取りを行いましたが、未だ「確認作業」が続行中である商社、小売店が多数でした。
参考資料元:シンガポールについてはMOH、HPB、MEWR政府機関ホームページ他は、農林水産省、WHOホームぺージ
また本内容は、2021年6月1日J+PLUSに掲載させて頂いた原稿に追加修正を加えております。